研究概要

研究目的:

脳型知能の重要な特質は、未規定で変動を続ける環境の中で自律的に拘束条件を生成することにある。 環境は個体自身の働きかけによっても変化し、個体の歴史とともに発展を続ける。 つまり、環境と個体の発展は不断に関係を作りながら、非分離で非可逆な過程となる。 環境と個体の関係的な発展として拘束条件が獲得される時、知能の働きも状況依存性を獲得することが可能になる。

このような立場から脳の働きを考えると、情報的な複雑性を発展的に表現できる新たな神経機構の解明が必要となる。 われわれは、脳の神経ダイナミクスを複雑系として記述し、その複雑性の上で環境や行動変化とともにリアルタイムで発展的に情報が生成されると考える。 このような神経ダイナミクスによって知能の創発性の原理を提示することを目的とする。

複雑性をもつ神経ダイナミクスとして、特に注目しているのは神経集団の振動活動の同期非同期である。 認知行動の過程で起きる同期非同期の神経ダイナミクスはシステムと環境の異質なプロセスの整合性を保ちながら協調的に発展することを可能にするのである。 生理、心理など様々なレベルの実験的知見をもとに、脳のダイナミクスのルールを抽出し、神経回路モデルを構成する。 さらに、知能システムとしてのモデル構築とヒト脳活動の測定解析を通して、状況依存的な脳型知能の設計原理を探る。

主な研究テーマ:

  1. 海馬と関連皮質における細胞のダイナミクスを考慮した認知地図の生成と操作の計算理論。
  2. 認知・記憶・思考課題におけるヒト脳の大域的活動の時間空間構造の解明  脳活動の測定としては頭皮脳波、fMRIとそれらの同時測定などを行い、その結果から非線形振動子結合系の原理として大域的結合を解明する。
  3. ヒトとヒトのコミュニケーションにおける協調的発展の時間構造の生成とその役割を、行動おより脳波レベルでの実験と理論から解明する。
  4. 非線形振動子の数理モデルのシミュレータや脳波解析のツールの開発。